平成28年の税制改正の中で、皆様に身近な改正部分を下記3項目に分けて説明します。
更に詳しい情報をお知りになりたい方、又は記載した以外の改正点についてご質問等のある方は当事務所までお問い合わせ下さい。
■ 改正の方向性 ー 課税ベースを拡大し税率を引き下げる
■法人税率が平成28年度には23.4%、平成30年度には23.2%に引き下げられます。
従 前 | 平成27年度 (改革初年度) | 平成28年度 平成29年度 平成28年度改正(改革2年目) | 平成30年度 平成28年度改正(改革2年目) | |
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法人税率 | 25.5% | 23.9% | 23.4% | 23.2% |
■課税ベースの拡大等
①生産性向上設備投資促進税制の縮減(平成28年度)、廃止(平成29年度)
*それぞれ、4月1日以後に取得等する資産について適用になります。
~平成27年度 | 平成28年度 | 平成29年度 | |
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機械装置など | 即時償却 or 5%税額控除 | 50%特別償却 or 4%税額控除 | 廃止 |
建物、構築物 | 即時償却 or 3%税額控除 | 25%特別償却 or 2%税額控除 | 廃止 |
②減価償却の見直し
*平成28年4月1日以後に取得等する資産について適用になります。
改正前 | 改正後 | |
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建物 | 定額法 | 定額法 |
建物附属設備、構築物 | 定額法 or 定率法 | 定額法 |
③青色繰越欠損金等の繰越期間の延長
*青色繰越欠損金の繰越期間を10年に延長する改正が、「平成30年4月1日以後に開始した事業年度」となりました。
■その他
企業版ふるさと納税の創設
*地域再生法の改正法施行日(平成28年4月20日)から平成32年3月31日までに支出した寄附に適用されます。
従前の損金算入措置(約3割の負担軽減)に加えて、 ①法人事業税:寄附金額×10%の税額控除(税額の20%(平成29年度以降は15%)を上限) ②法人住民税:寄附金額×20%の税額控除(税額の20%を上限) ③法人税 :②で控除しきれなかった金額と寄附金額×10%とのうちいずれか少ない金額の税額控除(税額の5%を上限) |
■三世代同居に対応した住宅リフォームに係る特例
自己の有する家屋に三世代同居対応改修工事を行い、平成28年4月1日から平成31年6月30日までの間に居住の用に供したときは、次のいずれかの特例を適用できる制度です。
対象工事
1.キッチン 2.浴室 3.トイレ 4.玄関
要件
①上記対象工事のいずれかを増設し、改修後、上記1から4までのうちいずれか2つ以上が複数になること。
②工事費用が50万円超であること。
(1)借入金の場合(ローン控除の特例)
三世代同居対応改修工事を含む増改築工事に係る住宅ローン(償還期間5年以上)の年末残高1,000万円
以下の部分について、一定の割合を乗じた額を5年間の各年において所得税額から控除する。
控除額 = ローン残高 × 控除率
ローン残高 | 期間 | 控除率 | |
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①増改築工事全体 | ~1,000万円 | 5年 | 1.0% |
②うち三世代同居対応改修工事 | ~250万円 | 5年 | 2.0% |
※①は上限7.5万円、②は上限5万円で、毎年合計12.5万円を上限(5年合計で62.5万円を上限)
(2)自己資金の場合
三世代同居対応改修工事に係る標準的な工事費用相当額(250万円が限度)の10%を所得税額から控除する。
控除期間は工事を行った年の1回限りとなります。
また、その年分の合計所得金額が3,000万円を超える場合には、この規定は適用できません。
■医療費控除の特例(スイッチOTC薬控除)創設
①特定健康診査(いわゆるメタボ健診)②予防接種 ③定期健康診断 ④健康診査 ⑤がん検診 のいずれかを受けている者が、平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に、一定のスイッチOTC薬(※) の購入費用が年間12,000円を超える場合には、その購入費用のうち12,000円を超える額(年間88,000円が限度)を所得控除できる制度が創設されます。
但し、本特例を受ける場合、現行の医療費控除は受けることができなくなります。
※スイッチOTC薬とは
従来医師の処方箋が必要だった医療用医薬品の中から、安全性・有効性から鑑みて薬局で購入できる一般医薬品・要指導薬品に切り替わった(=スイッチOTC(Over The Counter(カウンター越しで売られるという意味))医薬品のことです。対象となる医薬品は、厚生労働省のHPでご確認ください。(2か月に1度更新の予定)
■被相続人のみが居住していた不動産(空き家)を譲渡した場合の特例
被相続人(亡くなられた方)のみが居住していた家屋及びその敷地を相続した相続人が、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、その家屋及び敷地を譲渡した場合に、その譲渡所得から3000万円を控除することができるようになりました。
(国税庁より抜粋)
この特例は、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に譲渡した場合に適用されます。
要件は以下のとおりです。
1. 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。
1. マンションなどのような区分所有建物でないこと。
1. 相続開始の日から譲渡するまでの間、事業用、貸付用、居住用とされていないこと。
1. 耐震基準を満たしていない家屋は、耐震リフォームするか、取り壊して譲渡すること。
1. 譲渡対価が1億円以下であること。
この特例は「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(譲渡所得を計算する際に相続税額を取得費に加算できる特例)」と、いずれかの選択になります。
但し、居住用財産についての譲渡所得の他の特例とは、重複して適用することができます。
事業者が事業者免税点制度(※1)及び簡易課税制度(※2)の適用を受けない課税期間中に、高額特定資産(一単位の課税仕入額が1,000万円以上となる棚卸資産または固定資産)の仕入れ等を行った場合には、その仕入れ等を行った課税期間から3年を経過する日の属する課税期間までは、事業免税点制度及び簡易課税制度は適用できないこととされました。
(国税庁より抜粋)
上記規定は、平成28年4月1日以後に高額特定資産の仕入れ等を行った場合に適用されます。
※1 事業者免税点制度とは
基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者については、その課税期間の消費税を納める義務が免除される制度。
※2 簡易課税制度とは
基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出している事業者は、課税売上高から仕入控除税額を算出できるという制度。
実際の課税仕入れ等の税額を計算する必要がなく、計算が簡易である。